みやこやスタッフブログ 振袖について

振袖はなぜ高価なの? それには理由があります

振袖はなぜ高価なの? それには理由があります

多くの方が「着物は高価なもの」というイメージをお持ちだと思います。

最近でこそ、ポリエステルの着物などお手頃な価格の着物も増えてきましたが、洋服と比べると「高い」と思われるのではないでしょうか。

しかしながら、1枚の着物が仕立て上がるまでの工程を考えると、決して「法外」なお値段というわけではありません。

今回は、着物がこれほど高価である理由について、みやこやスタッフがお伝えいたします。

 

正絹(しょうけん)の着物

正絹の振袖

振袖や訪問着などの「フォーマル着物(礼装)」には、正絹(シルク100%)の生地を使用するのが一般的です。

正絹生地の原料は、蚕(かいこ)の繭(まゆ)からとった「生糸(きいと)」や「副蚕糸(ふくさんし)」と呼ばれる絹糸です。

生糸は、現在、日本国内ではほとんど生産されていませんが、多くの工程を経て作られる貴重な天然繊維ですので、とても高価なものです。

生糸から作られる絹織物は、滑らかな手触りや美しい光沢など、他の織物には代えられない上質さがあります。

 

なお、同じ正絹の織物ですが、生糸にならなかった「くず糸」である副蚕糸から作られるのが「紬(つむぎ)」です。

紬は、糸の太さが不均一で織ると「節」が入るので、昔は比較的安価な絹織物でした。現在では、糸を紡いだり織ったりする職人技がたいへん貴重になり、独特の風合いに熱烈なファンも多く、高級な織物となっています。それでも、一部の「訪問着」などを除き、振袖や留袖などの「フォーマル着物」には今でも原則として使用されません。

一枚の着物を仕立てるためには、表地だけでも、幅38cmほどの正絹生地が12~13m必要です。袖丈の長い振袖ですと16m以上になります。

袷(あわせ)の着物には、さらに裏地がつきます。カジュアル着物にはポリエステルの裏地を使用することもありますが、高級な着物の場合には、裏地も正絹生地を使うのが一般的です。

高価なシルク生地をこれだけ贅沢に使用しますので、それだけを考慮しても、着物が高価なのも納得がいきます。

これまで、シルクに代わる化学繊維の開発が試みられてきました。現在では、良質なポリエステル生地が振袖などに使用されることもありますが、やはり正絹には及びません。

 

職人技による美しい染め模様

振袖の美しい染め模様

着物といえば、その美しい「染め模様」が最大の魅力とも言えます。

着物の意匠(デザイン)には、色彩や伝統文様についての知識はもちろん、染色技法についての知識や、草花などの描写力など多彩な知識と技術が必要です。

中でも、振袖や訪問着、留袖などの「礼装」は、縫い目をまたいで柄がつながる「絵羽模様」を特徴としています。

絵羽模様

絵羽模様は、仕立て上がった着物を着用した時に美しく見えるようにデザインされています。

こうして作成された図案を元に、「絞り染め」や「友禅染め」、「型染め」などの伝統技法を用いて、美しい模様が染め出されます。

「友禅染め」とは?歴史や技法を知れば振袖の魅力がもっとわかる!

どの染め技法も、専門の職人さんの高度な技術が必要ですし、数多くの工程を経て作られています。染めあがった模様を見ると、やはり機械プリントには無い味わいや魅力がありますね。

これだけ手がかかっている分、着物の生地は、工場で量産される洋服地よりもはるかに高価な物になっています。

 

手縫い仕立て

手縫い仕立ての振袖

着物の形になるまでに、忘れてはいけない最終工程が「仕立て」です。

浴衣などはミシン仕立てが多くなりましたが、着物は和裁の手技による「手縫い仕立て」を基本としています。

日本に古くから伝わる和裁は、「直線裁ち・直線縫い」と「手縫い」を原則とする着物のための縫製技術です。

洋服の場合は、身体にフィットするようにカーブを多用した「型紙(パターン)」を使い、ミシンで縫いあげます。こちらも専門的な技術が必要ですが、手縫いよりも短時間で大量に生産することができます。

 

手縫いの着物は、職人さん(和裁士さん)が一針一針丁寧に縫ってくれますので、ミシン仕立てに比べて手間もコストもかかります。

また、縫い目を目立たせない和裁特有の縫い方などで、美しい仕上がりになります。

最近では、ミシン仕立ての着物も販売されていますが、専門の職人さん(和裁士さん)の手による「手縫い仕立て」の着物には、見映えも着心地もはるかに及びません。

このほかにも、高級な生地をミシン仕立てにはできない(もったいない)理由があります。

ミシンで縫製した着物は、解いて仕立て直すことができません。ミシン針は生地に穴をあけて傷めてしまうためです。手縫いの場合は、ごく細い針を斜めに入れるので生地を傷めません。そのため、手縫い仕立ての着物は「仕立て直し」や「仕立て替え」が可能です。

日本の着物は「貴重な生地を大切にして、長く着続けること」を前提にしています。着物文化と和裁は、「切っても切れない関係」と言ってもよいでしょう。

正絹の着物は、保管状態がよければ、お子様やお孫様の代まで伝えることができます。

最近では、「ママ振袖」という形で、20年以上前にお母様が着用した振袖を着るお嬢様も増えています。

振袖を訪問着に仕立て直したり、羽織やお子様の祝い着にしたり、形をかえて着続けることもできます。

着物は確かに高価ではありますが、長い目で見れば、お値段に見合った以上の価値があるのではないでしょうか。

 

まとめ

着物は洋服に比べて「高価」なイメージがあり、実際に決して安いとは言えません。

貴重な正絹生地を贅沢に使用していることや、伝統の職人技で染められた美しい模様の魅力、丁寧な「手縫い仕立て」を考えると、納得のお値段と言えそうです。

コスト重視の大量生産・大量消費ではなく、本当に価値のある物を長く着続けるという「着物文化」の良さも大切にしていきたいですね。

 

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