昔からお祝いの席に着る、未婚の女性の第1正装とされてきた華やかな振袖。
そんな振袖に描かれている柄の多くは、柄それぞれに意味が込められているものです。
今回は、よく振袖に描かれている柄の紹介をします。
そこから手持ちの振袖や着物、成人式に着用予定の振袖にどんな願いが込められているのか知るきっかけに、
また、どんな願いが込められた振袖を着たいか、選ぶ参考になればと思います。
婉曲な表現を好む日本文化 ~着物の柄に願いを込めて~
婉曲な表現と遠回しな表現の事です。
日本では昔から協調性をとても大切にしてきた歴史があります。
それは聖徳太子の十七条の憲法の第一条で、和を大切にして人と争ってはいけないと書かれ、
和を乱した者には村八分(村の人全員から避けられる)の制裁がなされるほどでした。
現在でも、出る杭は打たれる等、他と同調しましょうと諭した教えが残っています。
そんな協調性を大切にしてきた日本文化の中で、自分の意見や思いを言うことで相手に嫌な印象を与えないように、
人間関係に波風を立てないように、遠回しに物事を伝えようと定着していったのが婉曲な表現でした。
代表的な婉曲表現は「死」を表す「亡くなる」や「永眠」、物事を断るときに使う「見送る」などです。
こうした婉曲表現はもちろん海外でも使われていますが、
個人間の人間関係からビジネスシーン、端は政治にすら婉曲表現を使いYesやNoを
直接的に発信しないようにする風潮は日本の独特な文化だと言えます。
そんな婉曲表現を使い協調性を大事にしてきた日本人です、
直接言葉で伝えるのではなく、着物の柄に思いを託すことも自然と納得がいくことではないでしょうか。
振袖の柄の多くは吉祥文様
着物に使われる柄は、自然や季節、動物または、縁起の良い熨斗などの和小物まで様々ですが、その多くが古典柄とされる吉祥文様です。この吉祥文様は、日中韓の漢字文化圏で広く使われており、国それぞれで多少の違いはありますが、縁起の良い柄とされ慶事や晴れ着などに用いられてきました。1つ1つの吉祥文様にはそれぞれ意味があり、種類は数十種類に及ぶと言われています。お祝いの席の第1正装とされる振袖の柄も、多くはこの吉祥文様が描かれています。ここからはそんな振袖によく使われている、吉祥文様をご紹介します。
植物
・松竹梅
松は長寿の象徴。竹は力強さ、子孫繁栄。梅は忍耐力、生命力の象徴とされています。
その3つが一緒に描かれたのが松竹梅、冬の寒さを耐え忍び、花を咲かせためでたさを象徴する柄です。
・桜
日本の国花に指定されている桜も振袖によく描かれる吉祥文様1つです。
見る人を楽しませる、見た目の華やかさと幸先の良い物事の始まりを象徴する柄です。
・牡丹
「立てば芍薬(しゃくやく)、座れば牡丹」と言われ、美しい女性の象徴的な花の牡丹。
吉祥文様の牡丹には良い前兆の顕れという意味があります。
動物
・鶴
「鶴は千年、亀は万年」とよく聞くように、鶴は長寿の象徴です。
また、どんな鶴の姿が描かれているかによって込められた意味も変わってくるくらい、吉祥文様でも種類の多い動物です。
和小物
・扇
日本独自の吉祥文様である扇は、すぼんだ先から広がってゆく、
末広がりの形から発展や繁栄を意味します。
・宝尽くし
吉祥文様の宝尽くしとは、打ち出の小づちや宝巻、
隠れ蓑等のいろいろな縁起の良い宝物を集めて描いた柄の事をいいます。
意味は打ち出の小づち等がお金に困らないように。宝巻等が知識や知恵。
隠れ蓑等が厄災から身を守れるように。といった具合です。吉祥文様の決定版といったところでしょう。
・熨斗
こちらも鶴同様に種類の多い柄です。永遠の象徴とされています。
吉祥文様以外の振袖に描かれる事の多い柄
・辻が花
辻が花は、絞り等で描かれた藤や椿に似た幻の花の柄です。
振袖に描かれることが多いのに文献としての残されている資料が少なく、
しっかりと意味をお伝えすることが出来ない柄です。
単体でも素敵な椿と藤に似た花だけに辻が花が描かれた振袖は大変華やかで高価な物が多いです。
・百合
モダンな振袖に洋花として描かれる百合は、不思議なことに吉祥文様ではありません。
しかし、百合の花ことばから純潔や無垢等の意味があります。
振袖の柄に込められた願いを読む
私の家には持ち主のわからない振袖があります。
私の母方の親族の誰かが着た振袖に間違いはないのですが、誰が着た振袖なのかがわからないのです。
そんな振袖に描かれているのは、見事に羽を広げた孔雀と蓮の花。
2つとも吉祥文様で孔雀は子孫繁栄と厄除け、蓮は良いことが続くという意味があります。
振袖の持ち主の子孫がその振袖に込められた願いを読み解き先祖に思いを馳せてみる、そんな体験をした瞬間でした。
これから振袖を選ばれる方は、
是非とも、言葉ではなく文様で願いを伝える日本らしい奥ゆかしさを踏まえて振袖を選んでみてはいかがでしょうか。
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